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ガンの手術(がんのしゅじゅつ)

成功させるのは医者の腕と患者の体力
とにかくガンをすみやかに取り除くことにかけては、手術(ガン病巣切除)にかないません。ただし、発見が早く、ガンが一箇所にとどまっていて、メスの届く範囲にある場合です。これなら手術だけでガンを葬り去り、完治も可能です。しかしながら、多くのガンは二箇所以上に広がっていたり、転移をしていたりするので、手術だけでなく他の療法(現代医学では抗ガン剤、放射線)を併用します。
 
医師から手術を勧められれば、大方それに従うことになります。ただし、すべてのガンが手術に適しているとは限りません。ガンの種類や進行度、転移の程度、全身状態、年齢と体力などで、手術が第一選択にならない場合もあります。
 
外科系の医師は、手術こそがガン治療の王道だと考えている傾向があります。また、手術は職人技なので、技術を向上させるためにも、低下させないためにも、メスを使いたがります。難しい手術にも挑したくなります。これは外科系医師の習性で、またこの気持ちがなくては腕が上がりません。ただ反面、手術を勧めすぎることにもなりかねません。迷ったときは、セカンド・オピニオン(主治医以外の医師の意見)を参考にすべきです。医師同士の気兼ねもありますので、中立の立場で判断できる方がいいですね。セカンド・オピニオンを紹介してくれる機関もあります。
 
さて、手術で気をつけておかねばならないのは、次の点です。
 
「手術により筋肉中のたん白質が切除部分の修復に費やされて、全身の栄養状態の低下がおこる。特に高齢者や侵襲の大きな手術では、免疫能低下と共に術後感染症の合併症を誘発する原因となる。
(日本医科大学 第一外科)
 
人体の皮膚や粘膜は、外部からの刺激や傷を想定して修復機能が備わっていますが、内臓などの体内は切り刻まれることに慣れていません。それだけに、ガンを摘出する外科的措置はたいへん負担がかかります。傷を修復することと感染を防ぐことが課題となります。しかし、そのために用いられる抗生物質は、菌の数は減らしますが、傷を直したり免疫力を上げるわけではありません。また、体力や免疫力が落ちている状態の手術では、かえってガン細胞が飛び散ることがあります。
 
外科医の祖といわれるパレは、「私が包帯を巻いて、神が治したまふ」という言葉を残しています。外科医は、ガンを切り取って傷口を縫うのが仕事です。メスが入った場所をふさぎ、切られた内臓の残りがしっかり働くようにするのは、患者さん自身の力です。