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免疫療法(めんえきりょうほう)

腸管免疫
お腹の中にスゴイ免疫力がある!
免疫は危険(人体にとって危害を加える異物)から身を守る防衛システムです。体の外から侵入する異物(カゼやインフルエンザのウイルスや細菌など)、体内から発生する異物(ガン細胞など)を、監視し発見したら攻撃排除します。

免疫はそれぞれ担当の細胞が相互に連携して機能します。その多くは血液の成分の一つである白血球に含ます。白血球は、顆粒球、単球、リンパ球に分類され、さらに細かくマクロファージ、NK細胞、Tリンパ球、Bリンパ球などに分かれます。これら免疫細胞は、血液がつくられる骨髄(と現代西洋医学での常識ですが、一部異説もあります)や、胸腺(若いうちに退化しますが)が重要な役目をすると考えられてきました。

しかし最近の研究では、免疫細胞がよく働くためには腸(小腸・大腸)が重要な鍵を握っているということがわかってきたのです。(腸管免疫)免疫細胞は緊急出動するために、全身のあらゆるところで準備しています。リンパ節が免疫細胞の前線基地になっています。実はこのうちの約80%が小腸と大腸に集中しています。とくに小腸にはパイエル板というリンパ小節が1500以上も存在し、リンパ球の70%以上が待機しているといわれています。

腸といえば、消化器に属する内臓です。口から入った飲食物が食道、胃、十二指腸を経て、小腸で栄養吸収され大腸で糞便となり、肛門から排泄される。主に人体に必要な栄養摂取と不必要なゴミの分別と排泄が仕事です。それなのに、なぜ免疫細胞がたくさん集まり、免疫機能を備えているのか?

もし、胃腸で消化吸収されないものを飲み込んで、そのまま便の中に紛れ込んだとしたら、肛門から出てきます。この現象は消化管(口~肛門)が人体内にホースのような管として存在し、実は皮膚のように外界と接していることを示しています。つまり消化管の飲食物と接する部分(粘膜)は体の外側なのです。もしここから体にとって有害なもの(異物)に侵入されたら、人体はとても危険にさらされてしまいます。したがって、体内に入る前に監視し、悪さをするようであれば速やかに攻撃し排除しなければなりません。腸に免疫機能が集中しているのは、必然なわけです。

このように免疫機能にとって重要な腸の状態が悪くなることは、免疫力を低下させたり異常にしてしまうことが判明してきました。現場の腸機能の異常(下痢・便秘)だけでなく、ガンや糖尿などの各種生活習慣病、アレルギー、肌荒れなど全身に影響してきます。

慢性的な便秘は大腸ガンの温床になります。イギリス人は大腸ガンが多いのですが、平均的に大便の量がとても少ないそうです。アメリカ カリフォルニア大学の調査(ペトラキス博士とキング博士)によると、乳ガンの検診に訪れた1481人の乳房から細胞を採取して調べたところ、排便の回数が週に2回以下という便秘体質の女性の場合、4人に一人の割合でガンにつながる異常細胞が見つかっています。ちなみに、1日一回以上排便がある女性で異常細胞が見つかったのは、20人一人という割合でした。(「プロバイオティクス健康法」 小学館より)腸管免疫がしっかり働くためには、腸内環境を良くすることです。また腐敗物が発生する毒素や活性酸素が発ガン因子にもなります。

●腐敗して腸内に滞りやすい食生活を改善する。
→食べ過ぎない。高カロリー(とくに糖分)・高脂肪・高タンパク食を見直し、食物繊維、酵素、ビタミン、ミネラルの多い食品を摂る。

●腸内の善玉菌の割合を多くする。

食べ方も含めた食生活の改善に、必要であれば補助食品などを利用して腸の中をきれいにしておくことが、発ガン予防や腸管免疫の発揮につながります。乳酸菌関連製剤や酵母製剤は腸管免疫のサポートを期待できます。また、免疫賦活作用がいわれているキノコやフコイダンなどは、腸管のパイエル板を刺激し、免疫を活性するサイトカインの産生を促進することが作用機序の一つと考えられています