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放射線療法(ほうしゃせんりょうほう)
手術より優先されることも
放射線療法は、すべてのガンが対象ではありません。放射線のほうが他の治療より有効と判断されるガンの場合、手術や抗ガン剤と併用する場合、生活の質を維持したり高める(痛み、呼吸困難、嚥下困難などを緩和する)場合に行われます。
放射線がガンに効くメカニズムは、
「人体の細胞に放射線が照射されると細胞内の水に作用して、様々な活性酸素というものが作られます。活性酸素はDNAを傷つけ、細胞はこれを修復しようとしますが、ある程度以上になると修復できず、細胞分裂ができなくなって、細胞は死ぬことになります」(「阪大医学生が書いたやさしいがんの教科書」より)
放射線療法には、X線、電子線、コバルト60(γ線)、陽子線、重粒子線、中性子線などが使われます。放射線療法は大きく二つに分けられます。
1.根治照射(治癒を目指す治療としての放射線療法)
*放射線単独、または抗ガン剤との併用
手術よりも形態や機能が損なわれない。皮膚ガン、頭頸部ガン、悪性リンパ腫、子宮頸ガン、
肺ガン、食道ガン、前立腺ガン、などが対象。
*手術の前後
手術しやすいようにガンを小さくしたり、手術でガンが散らばらないよう手術前に照射する。
また、手術で取り切れず残ってしまったガンを殺す目的で行うこともある。
*手術中にガンに直接照射する
*再発ガンに対する治療として
2.緩和照射(症状の改善を目的とする)
ガンの進行にともなう気管や脊髄が圧迫された場合の緊急的措置と、痛み、呼吸困難、嚥下(えんげ=飲み込むこと)困難などを緩和するQOL(生活の質)改善目的で行われる。
対象例
頭頸部ガン(痛み、呼吸および嚥下困難の改善)
脳腫瘍(症状の改善)
食道ガン(通過障害の改善)
肺ガン(血痰、痛み、呼吸および嚥下困難の改善)
子宮頸ガン(止血、痛み)
膀胱ガン(血尿、頻尿改善)
直腸ガン(止血、痛み)
軟部組織肉腫(症状の改善)
小児腫瘍(症状の改善)
悪性リンパ腫(症状の改善)
転移性骨腫瘍(痛み、骨折防止)
放射線療法の副作用
もちろん放射線療法は全身に当てるわけではなく、ガンをターゲットに照射します。しかし、ガン細胞の周辺には当然正常細胞があるので、副作用もでます。皮膚、粘膜、体内で火傷のような状態がおこります。代表的な副作用は次のようなものです。
《放射線宿酔》
疲労感、倦怠感、食欲不振、軽度の吐き気・嘔吐、頭痛、寒気、発熱など。二日酔いのような症状
《骨髄抑制》
白血球減少、血小板減少、造血機能の低下
《皮膚》
日焼けに似た症状(汗腺、皮脂腺、毛細血管が損傷を受けるため)、皮膚の乾燥、むくみ、皮膚潰瘍、皮膚萎縮など
《粘膜》
皮膚より粘膜のほうが、細胞分裂、再生が早いため、放射線の影響が出やすい。
口腔粘膜、咽・喉頭粘膜:口内のねばつき、味覚異常、口の乾燥、口内咽頭部痛、咀嚼・嚥下痛のため食事摂取困難
食道粘膜:つかえ感、嚥下痛
胃粘膜:胃酸が出にくくなる、急性胃炎
腸粘膜:食欲低下、下痢、腹痛、潰瘍
膀胱、尿道粘膜:残尿感、頻尿、排尿痛、血尿
《肺》
咳、痰、発熱、呼吸困難、胸痛
《脳》
脳の微小血管に影響を受け、浮腫、炎症が生じる。吐き気、嘔吐、頭痛の原因になる。
《骨》
転移性骨腫瘍に対し、腫瘍縮小と、骨の再生の目的で放射線治療をすることがある。ただし、すでに骨が弱くなっていて再生が進まないうちに放射線を照射すると、骨折をおこすことがある。
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